(7)中西彦助×首藤慎二
                                                                                            7月某日 AKIKANにて

<中西彦助 プロフィール>
2001年9月より、劇団衛星のファーム(二軍)劇団であった「劇団星衛」に参加。2003年秋まで活動する。 同時に音楽活動も行い、現在は京都発・お祭型ソウルサバイバー「Hicoband」のVoを務める。 http://hicoband.jimdo.com/






衛星に入るきっかけは?


中西:(劇団衛星の公演を)HEP HALL(※大阪・梅田にある劇場)で観たんすよ。すごい面白かった。

首藤:それで、入ろう!と思って?

中西:その時は、なんかプロや!と思ったんすよ。(僕は)1回生だったんですけど、そういうのが入れるとこじゃないと思ってたんです。けど、その後、たまたま東山青少年活動センターに行った時、その時出てた人が、便所にいはったんで。まぁ蓮行さんなんですけど。ほおお。

中西:「蓮行さんや」と思ってしゃべりかけた。別にそこでは何もなかったんですけど。

首藤:そこで「入れてくださいー!」とは言ってなくて…?

中西:「入れてください」は言ってないと思うんですよ。何をしゃべったか覚えてなくて。とりあえず「あの時観ましたー」って言いたかったんすよ!笑

首藤:ああ。で、その時は何もなくて、そっから…?

中西:その時(の公演でもらったチラシ束の中に)、『千年王国(の避難訓練)』(※2001年9月に行った公演)のチラシがあったのかもしれないですね。で、あのぅ…そのチラシに「劇団衛星と劇団星衛(※劇団衛星のファーム劇団)同時公演」って書いてあって。星衛は(出演者が公募されていて)応募したら出れるかもしれないって書いてたのかもしれない。後日、それをあてに、奈木野(健次)さんやったかなぁ…連絡先書いてあった人に、連絡したような気がしますね。…でも、最初のきっかけはHEP HALLで観たことなんですけど、あの芝居のタイトルもなんも覚えてない笑

二人:あはははははは笑

中西:とりあえず、すげーと思って。とにかくファックさんが。その後のギャップも…。あんなに謙虚な人なんだって思わなくて。

首藤:ああああ。舞台上で観る姿とのギャップ…。確かにファックさんって、僕も最初は舞台で観て知ったんだけど、名前とか風貌とかにまず勝手なイメージを抱くじゃないですか。

中西:ああ、はい笑

首藤:で、実際に会ったら…「何この、森のクマさん感!!」というか、すごく…。

中西:ものすごく好印象になりますよね

首藤:ねぇ!ギャップがすごすぎるよね!反動が!!

中西:なんか、泉谷しげるがちょっといいことしたみたいな…。

首藤:あああ!

中西:「好感度上がって嫌なんだよ!」って言ってる感じ笑

首藤:うんうんうんうん。やぁー、そうやわぁー。で、(奈木野さんに)連絡して、次は稽古場に行ったの?

中西:いや、多分「(京都大学)A号館に来い」って言われたんじゃないすかねぇ。(※植村注:当時は、そこの教室で稽古やミーティングをよくしていました。)

首藤:へえ。その時は、ウェルカムにどうぞどうぞって感じで迎え入れられたわけなの?

中西:いや、違いますねぇ。A号館へ行って、僕はテンションが高かったので、結局…「なんや、こいつ」みたいな(受け入れ方をされた)。笑

首藤:あはははは。その時が何歳?

中西:19ぐらいじゃないすかね。そこには、根本くんもいたんすよ。ガムスターチって人もいて…。

首藤:ガムスターチ?ガムスターチって何者?

中西:(本名は)宮本(統史)さんって言うんですけど。その当時はもう、劇団衛星や星衛からは離れて、コンテンポラリーダンスに目覚めてはったと思います。でも、その公演は一応客演として出てたんすけど。

首藤:はあー。

中西:ほかには、その時は、そらおさんって人もいて…。

首藤:そらおさん…?

中西:奈木野さんの知り合いの人で…。

首藤:それまでは、彦助自身は、お芝居をやったりとかはしてたの?

中西:全くやった経験とかなくて。とりあえず行ってみて…。

首藤:それで入ることになったの?

中西:『千年王国』をやって、その後に…。終わってからだったと思いますね。公演の時は、出演者募集に応募して来たヤツみたいな立場でいて、終わってから、一応「入ります」と(言いました)。

首藤:それは、星衛に入団っていうことなんや?

中西:はい。

首藤:へぇー。当時は何人くらい、星衛にいたかとか覚えてる?

中西:奈木野さんが座長だった。で、紙本さんも星衛(の団員)だったし、山本裕子さんも。黒木さんは…衛星(の人)だったかな? そんな豪華女優陣の中に、高橋(良明)君がいたり笑

首藤:高橋君って、インタビューサイトでおなじみの?(※「頭を下げれば大丈夫」というインタビューサイトを運営している)

中西:でもその時は、バリバリ役者さんやったし。

首藤:そうなんや!高橋君がバリバリ役者時代っていうの…(想像できない…)。

中西:それで、NF(※京都大学11月祭)で、星衛が公演をやることになって、その時に黒木さんが衛星から演出で来てくれた。黒木さんの『どりーみんぐ・アイコ』(※黒木の処女作。1999年初演。2001年に当時在籍していた星衛フルメンバーにて再演した)っていう作品があって、めっちゃ面白いんすけど。それに僕らも出たんす。高橋君が主役のアイコの役だったと思うんすけど。

首藤:高橋君がアイコの役なんや笑

二人:笑

中西:もう、めちゃくちゃ面白くて笑

首藤:へぇーーー笑

中西:(星衛のメンバーは)10人もいないすかね。

首藤:へぇー。へぇーー!へぇーーー!!ちょっと、その『どりーみんぐ・アイコ』について、もうちょっと知りたい!!

中西:それは、少女マンガみたいな作品で。黒木さんが好きそうな。(内容は)あんま覚えてないすけど。あはははははは笑

首藤:でも面白かったのは覚えてる?

中西:すごい笑。高橋君がすごい面白かったです笑

首藤:彦助はそれには出演していた?

中西:出てました。その次は、端役みたいなんで衛星の舞台に出た。ヨーロッパ企画との合同公演…だったかな?大阪によしもとがやってた劇場(※よしもとrise-1シアター)があって、そこでやった公演でした。(※2001年12月、京都頂上決戦と称して行った、京都の2劇団で同日程で公演する合同企画。劇団衛星は『赤べこカマトト早急便』を再演。)

首藤:(劇団衛星サイトの公演履歴を見つつ)『バンクバンレッスン』?…とかこのあたり?

中西:そうすね、2001年の夏くらいに…(初めて劇団衛星を知った)。あ、『(狂騒里見)八県伝』…(※2001年6〜8月、京都・神戸・大阪の3都市で公演)、これのHEP HALL(での公演)を観たんだと思います。

首藤:これを観たんだ。で、『千年王国の避難訓練』があって…。あ!あった!!『どりーみんぐ・アイコ』!

中西:あはははははは笑

首藤:(公演履歴のクレジットを見ると、出演者の欄に)紙本さんが一番最初に名前があって、次、彦助で、三番目に高橋君。…あ、ガムスターチさんいた!山本裕子さん!

中西:イノセンスさん(※井上大輔さんのニックネーム)ってわかります?

首藤:お名前だけは…。

中西:これ、めちゃくちゃ面白かったですよ笑

首藤:へぇー。京大総合人間学部E11教室でやってるやん。4日間。

中西:じゃあ、『どりーみんぐ・アイコ』が(僕が出演した)一発目なんすかね。そうですね。

首藤:これ…『脳天気番長(海老になる)』(※2002年6月、よしもとrise-1シアター「ビッグウエンズディ」に参加して上演した劇団衛星の短編)も出てるの?

中西:それは、出てないですね。

首藤:『希望の島奇譚』(※2002年10月上演した星衛の公演)…、あ、これ一番最初に(彦助の)名前がある。あ、でも、「星衛最終公演」て書いてる!これで活動終了したと…。

中西:そうですね。

首藤:これは、トップに名前があるってことは、主役やったん?

中西:主役だったかなぁ…?

首藤:覚えてる?ストーリーというか。

中西:新聞記者のことを「聞屋」って書いてあって、「聞屋」って言うんやーって(思ったのは覚えている)笑

二人:あははははははは笑

中西:これ、めっちゃ練習した気がする。

首藤:この『希望の島奇譚』?へぇー。

中西:チャック(・O・ディーン)さんに出てもらって、岡本(タダシ)さんもいはって、そんで柳川(智彦)さんにも出てもらいましたね。彼は、同志社(の学生劇団所属)ですよね。

首藤:じゃあ出演としては、これで最後?

中西:その後、『オフィスラブ』(※2003年3月、尼崎市のアルカイックホール・オクトオリジナルミュージカル)も出て…。『(劇団衛星の)コックピット』(初演。2003年6〜8月京都・大阪・東京で上演)の時…、駒場(アゴラ劇場)でやって帰ってきて、秋ぐらいに辞めちゃいました。

首藤:あ、そうなんだ。辞めようと思ったのは?単純に、もういい!ってなったの?

中西:…なんか…ひどい辞め方やったんで…。これは…笑。あははははは…あんまり笑

首藤:あんまり聞かんほうがいいね笑。わかった、もう深くは聞きません笑。でも、19の時から観て、入って、何年(くらい在籍したの)?2年くらい?

中西:そうすね。2年…くらい…。


とっておきエピソードみたいなものってある?

中西:蓮行さんの創っていく感じとか、すごい覚えてますね。衛星の人って、その時、僕からしたら年もすごい上だし。田中遊さんがいて、チャックさんがいて、駒田(大輔)さんもいて、岡嶋(秀昭)さんもいて、ファックさんもいて。そんなオールスターが、蓮行さんが来た時に、そこにシュっと寄って行くっていうか…。みんながアンテナ張ってる中で、コレってタイミングで、ビビッて、みんなが集中するっていうか。ダダダダダッて良いのが出て、形になっていく、スピード感…。本番も面白いですけど、稽古っていうか創っていく過程を見てるのも、すごいワクワクした。端っこの方でボケっと見てましたね笑

首藤:(彦助は)今、音楽やってるじゃないですか。作詞も作曲もするわけじゃないですか。(劇団衛星での経験が)活かされてたりする?

中西:蓮行式発声術(※蓮行が提唱・指導している発声術)は…会得してなくて笑

首藤:彦助は、もともと持ってるポテンシャルの声量がスゴイから。

中西:でも蓮行さんスゴイですよ。声枯れないじゃないですか。

首藤:あ、枯れない…。

中西:で、レンジも広いし。蓮行さんみたいに自由自在に歌えたらいいなって思う時ありますけど。曲を創るみたいなことも、みんなの前でやってるじゃないですか。リアルタイムでそこでやるじゃないですか。そういうのなんて、僕やってみたいと思いますけど。

首藤:自分で作ったものをバンドメンバーに渡して…?

中西:そうですね。そうやって。バンドサウンドを創るのをみんなでやるっていう(のがやってみたい)。
蓮行さんって、(創りたいものが先に)頭の中にあるのかないのか…。なんとなく、その当時、横で見てる時は、ないような感じに見えてて。でも、その場で閃いてバーって(創っていた)。だから、そんな風に創るのはスゴイなって。いつかそんなんで創ってみたら面白いかなって思いますけど。
それって、何もできない時も発生するかもしれないじゃないですか。でも、衛星の役者さんって、(そういう時も)もっとリカバリーしようっていうか、蓮行さんの発想を引き出そうみたいな感じでいてた。(そんな)周りを見てもスゴイなって思ってたし。何も出てこなかった場合のリスクもあるじゃないですか。すごいプレッシャーというか。僕が果たしてそれをできるかなって思ったら。今思い返してもゾクゾクするなって瞬間がある。緊張感みたいなものも、創ってる稽古場の中にあるし…。
よく蓮行さんが、「時間は均等には進まないんだ」みたいな言葉言ってたと思うんすけど。

首藤:はぁー。

中西:僕、相対性理論とかわからないですけど…。なんか言うてはったんすよ笑。本番まで(の時間)もそうですし。小屋入りしてからもまた…、最後の最後にいっぱい情報が詰め込まれて…とか。岡嶋さんなんて、最後の最後まで(新しい演出を)つけられてたし、(岡嶋さんもそれに)対応しはるし。対応しただけじゃなくて、更に上をいってるじゃないですか。結構、超人…。僕は、指くわえてた…、憧れてましたね。あははははは笑

首藤:マンガとかにあるような、自分がいる世界があって、違う島行った時に、なんだこの人達は!!っていう能力を持った人達がいて、衝撃を受ける、みたいな…?

中西:そうですねぇ。それで本番は、岡嶋さんはずっと出ずっぱりで、何公演もやって。昼(の公演)が終わって、夜(の公演の時には)また同じように舞台のソデで永ちゃん(※矢沢永吉)聞きながら、ワーワーワーって(やって)笑。ファックさんは、ずっとこう台本こうやって(じっと読んで)「それは違うだろう」とかってやってて。舞台の上って神聖なとこなんだなって。

首藤:舞台に上がるまでの創る過程の流れと、とはいえ役者はセリフを覚えたり段取り覚えたり、なんならちょっとやったろ!みたいな味付けみたいなのをやる。その流れが確かに他の劇団と違うなって感じは、客演したりすると、すごいするかな。

中西:なんかそこまでやってきても、まったく本番では関係ないじゃないですか。特別にうまくいく時もあって。…まあ、運みたいな、来てはるお客さんのリアクションとか(によるものが)あるじゃないですか。だからうまくいかへん時もあってうまくいく時もあって、そこが厳しいっていうか。

首藤:今でも、蓮行さんて、本番直前に集合した時に、キャストのみんなに「完璧にやってください。完璧にお願いします」って言って、始めるんやけど。でも、そういうことなんかなって。その「完璧」って言うのは、お客さんは初めて観るものだから、今までの練習がどうとかじゃなくて、その場で(実力の)120%を出せるかってところなんやろうなぁって。そういう意味では本当にシビアやし、厳しい人やなって思う。声が枯れないとか、スゴイなって思う。

中西:そうですね。


では最後に、20周年の劇団衛星に何かメッセージがあれば。

中西:あははははは笑

首藤:あはは笑 あの、どうなっていってほしいかとか

中西:劇団衛星…。そうすね。すごい歴史ですよね、20年。まぁ少しだけでも、今までの20年のうちに関われたっていうのは、幸せだなって思いますね。……………。(結構な沈黙)…生きてる中でずっと衛星のこと思ってるし、(僕は)素直に生きていくしかないと思うんすけど、アイツおったなって思われるように生きていきたいです。あはあはあははははは笑。…難しいですね。

首藤:わかりました。ありがとうございました。いや、いい話聞けた。