(13)奥田ワレタ×黒木陽子


「そうだ先輩に会おう!」ということで、最後は奥田ワレタさんにインタビューいたしました。奥田ワレタさんは同志社大学の演劇集団Q卒団後、1999年衛星に入団、2002年に退団されました。その後数々の舞台に主演した後、クロムモリブデンに入団。現在は東京で活動されています。 奥田さんは同い年生まれで劇団員としては私の方が先輩ではあるのですが、京都演劇界では先輩ということでお願いしました(あと、単にお話ししたかった)。ネットの無料通話でインタビューしております。もはや、インタビューの形は崩壊し、思い出話を語りちらかしております!



奥田ワレタさん。相変わらずの透明感!かわいい〜!



奥田:なん年前や、衛星にいたのって・・。10年・・15年くらい前の話やんね。

黒木:そうですね。(そんなになるのか!!)覚えている範囲で、お話お願いします・・。

奥田:はい。よろしくお願いします。



衛星に入ったきっかけ


黒木:衛星に入ったきっかけって、覚えてます?

奥田:克明には覚えてないんですけど・・。当時、同志社大学の「演劇集団Q」っていう学生劇団に入っていて、4年生やったのでやめなければならなくて。それで、京都で一番おもしろいと思っていた劇団が衛星だったのと、蓮行さんが誘ってくださって。

黒木:当時の奥田さんって、京都学生劇団界でめっちゃかわいいってモテモテで、ひくてあまたやったんちゃいますか?なぜ衛星に・・。

奥田:いや・・誘われたのは蓮行さんだけやったよ。

黒木:うそぉ!ええ!そうやったんや。めっちゃかわいくて「Qにめっちゃかわいい人がいる」って噂になってましたけどね・・・。私、Qの『給食帝国』っていうお芝居で初めて奥田さん見たんですけど、「たしかにめっちゃかわいい!」って思いましたもん。

奥田:あー、『給食帝国』ねー。つぶちゃん(黒注※役名です)。あれは・・可愛らしい服きてたしね。得な役やったし。アホなね。

黒木:あはははは。

奥田:黒木さんを初めて見たのはいつやったかな・・。

黒木:大実験劇場じゃないかな?衛星の今までの作品を全部やるっていう。

奥田:そうやそうや。忍者の役やってましたよね?番長シリーズの。おもしろい人やなと思ったような気がします。

黒木:奥田さんはお芝居の印象もあって、かわいい人やなって思ってたんやけど・・。実際に話してみたら、きさくというか、変な人やなというか・・、「あ、かわいらしい人じゃないんやな」って。

奥田:かわいらしかったら、『血の創世記』の打ち上げで、蚊帳の外にならんかったと思うわ。ははは(黒注※後述します)

黒木:ははは。

奥田:黒木さんは、舞台の外とあんまりイメージがかわらないね。黒木さんって、昔から若いってイメージの人じゃなかったから、今は年相応なんやろうな〜って思うけど。

黒木:年齢不詳になってきているような気がする・・。奥田さんもお変わりなさそう。

奥田:うーん。変わったと思うけどなあ。コンディションによるかな。あんまり寝てない日は老けるし、いっぱい寝てる日は若い。今日はおやすみやったんで、いっぱい寝たよ。

黒木:おやすみの日に、ありがとう〜。



衛星退団後に思うこと


奥田:私、衛星に入ってすごい成長したと思ってます。衛星に入った頃、幼かったので・・、「他人と自分は違う」ってことを思い知らされたというか、学んだって感じですね。厳しいっていうか、ちゃんとしてるっていう社風が。

黒木:それは私も学びました・・。今、年経って思うんやけど、当時って蓮行さん自身若いこともあって、厳しくせなあかん、ちゃんとしなあかんっていう面があったんちゃうかなあ・・。

奥田:そうなんや。今は違うの?

黒木:いや、そんなこともないな。今も、若い人に対しては、そのへん厳しいかなー。でも、まあ人間としては丸くなったよ・・。いや、どうかなあ・・、「そんなことない」って言われてるかもしれへんけど。

奥田:蓮行さんって、昔は男前キャラみたいな感じやったけど・・、今もそんな感じなんですか?

黒木:今はそんなことないですよ。「おじさん」って自分で言ってるし。女性との距離の詰め方は「あれ?おかしいな」って思うこともあるけど。

奥田:あるんや。ははははは。

黒木:でも社会性がある感じやで。「ははは。蓮行さんおもしろいわー」ていう。

奥田:今もやってる?蓮行流発声術。

黒木:うん、形は違うかもしれへんけど、やってるよ

奥田:あれは、すごく役に立った気がします。(発声練習の際に)歌を歌ったりするのとか・・。残念ながら会得できたとは思ってないんですけど、発声のヒントになったというか。私、今でも混雑したお店とかで声を通らせることができるので、その時は「これ蓮行流発声術やな」って思ったり。「下からいく(※)」っていうのが。

黒木:あー。「下から」ね。(黒注※蓮行術発声術とは・・衛星でやっている発声方法でして、低音部分の開発に重点をおいております。実際に「どんなの?」という方は、ぜひワークショップのご依頼を。ふふふ。)

奥田:その二つは、印象に残ってて。感謝してますね。



京大思い出いろいろ


奥田:そうそう、蓮行流発声術を会得できてないから、真夜中のA号館(黒注※京都大学吉田キャンパスA号館)で練習してて、自分がかわいそうで泣いたっていう思い出が。

黒木:あはははは。

奥田:・・衛星の稽古っていうと、京大の古いA号館っていうイメージがあるわ。今も(あそこで)演劇の稽古できるんですか?

黒木:・・よく知らんねんけど。・・夜中勝手に入ったりとかはできないんじゃないかなぁ。学生課に申請して借りれるという感じじゃないかな。

奥田:自由じゃなくなったんや。無法地帯でしたよね。チラシとか貼りまくって。学祭とかすごく楽しかった気がする。

黒木:私、『血の創世記』の時の奥田さんの立て看(黒注※宣伝の立て看板。当時は公演ごとに看板を作って左京区百万遍の交差点南東角の京大の石垣に立てていた)を、すごく覚えてるわ。油絵みたいなタッチで、宇宙船と人みたいな・・。全然作品の内容と関係ない絵やったけど。今も絵を描いたりしてるの?

奥田:うん、描いてるよ。

黒木:今の衛星のイラスト担当はファックさんになってるよ。昔は奥田さんが衛星のイラスト担当やったよね?

奥田:そうやっけ?でも、ファックさんのイラストの方が印刷物とかつくりやすそう。ラインがシンプルで。(黒注※奥田さんの絵はリアルタッチなのです。参考→奥田さんブログ『ジーパン日和』)

奥田:立て看楽しかったなー・・。OHPやっけ?で、下絵を看板に映し出して・・。今も立て看描くことある?

黒木:ないないない。今も京大の百万遍の角には立て看立ってるけどね。あの石垣も、壊されるって計画が出てたんやけど、それを阻止するために石垣の上にテントが立ってて。結局壊されんかってん。そのほかの部分は綺麗なスロープとかなってるのに、あの石垣はそのまま。

奥田:へー。意味わからんわ京大。

黒木:でも、だいぶ前やな、石垣撤去問題も。10年くらい前かもしれん。(黒注※Wikipediaで調べたら2005年でした。載ってることに驚き。)吉田寮も新しい建物できたし・・。

奥田:そうなん!!時代止まってたのにね、あそこも。体育館のマットみたいな臭いしてたけど。すごく味があって。

黒木:あのへんはまだあるけどなー。



思い出エピソード

ーーー以下、いろんな思い出がつらつらと語られていきます。


黒木:ほか、なにか思い出ってあります?

奥田:黒木さんと筒井加寿子(黒注※ルドルフ主宰の筒井加寿子さんです)とユーコさん(黒注※青年団所属の山本ユーコさんです)が一緒に住んでた家の、台所に一時住んでたよね。

黒木:はははは。

奥田:お布団にパン粉ついてるみたいな状態やった。

黒木:ひどい。汚い家でごめんなさいね・・。そうだ、あの台所は真野さん(黒注※中野劇団の真野絵里さん)も一時住んでたよ。引っ越しの時に新居に入るタイミングがあわなくて。あと、金田さん(黒注※金田典子さん)も住んでたわ。

奥田:そうなんや。・・ところで、真野さんもインタビューしてるの?

黒木:真野さん!ユニット美人にも出てもらったりして、ちょくちょく会ってることもあって、・・そういや候補にあがらんかった!

奥田:あと、衛星の頃の甘辛い思い出やねんけど・・。

黒木:はいはい。

奥田:こないだ友井田くん(黒注※友井田亮さん)とお会いして喋ってたんですけど。劇団衛星に入ってすぐの公演が『血の創世紀』で、その時の打ち上げが・・。当時若いってこともあったんかな・・色恋沙汰がすごかったって。

黒木:ああああ・・ちょっと思い出したくないなあ・・。あの時の公演は1000人入れるぞ!ってめちゃくちゃ頑張ってて・・。その盛り上がりとともに、色恋沙汰も盛り上がったんちゃうかな・・。

奥田:会場も野外やし、夏やったし、いろいろ、ねえ・・。

黒木:野生の血が盛り上がる、みたいな。若さと・・。若い劇団ってそういうのありますよねー。

奥田:でも、私は蚊帳の外やったな・・って。

黒木:あははははは。

奥田:すごい前の話ですけどね・・。衛星の思い出か〜。いろいろあるもんですね。



ーーーそのほか『真鍮のカナリヤ』の歌を奥田さんがまだ覚えていたり、その時お世話になった京大のアカペラサークル、クレイジークレフにヒャダインがいた話、そして衛星初東京公演の時に9.11が起こった話が出てきました。そして話は衛星の近況へ・・。



衛星の近況



奥田:衛星の事務所は・・今はさすがに蓮行さんの家じゃないよね。

黒木:うん、今は、四条烏丸の・・KAIKAの上の隅っこに事務所を構えてるよ。

奥田:出世したねえ・・、高野やったのに。

黒木:ほんまやねえ。いろいろ、大変なこともあるけどねー。あ、そうそう。『惑星組曲』(黒注※電視游戲科学舘『惑星組曲』2004年上演)の時に奥田さん、首藤くんと共演してたよね。首藤くんは結婚したよ。

奥田:え!そうなんや。首藤くんはまだ演劇してるの?

黒木:え?衛星団員やで。

奥田:ええ!!衛星団員なんやー。それは知らんかった。私、まだかわいかった頃の首藤くんしか知らんけど、まだかわいいの?

黒木:かわいくないよ。

奥田:ははははは。私は東京に来ていろいろ変わったけど・・。ずっと京都にいて、同じ劇団にいるってすごいね。ものごとを10年以上続けるってすごいと思います。

黒木:そうやねー。・・いたらいたで楽しいこともあるし、やめたらやめたで新しい世界に入っていけるし。

奥田:さっき言ってた、子どもに教えるのっていいね。そういや宝ヶ池プリンスホテルでもやったねえ。(※クリスマスに子ども向けのショーを上演しました。)

黒木:うん、やったねえ。

奥田:そうや、学校公演もしたよねえ?・・なんかいろいろ段取りしたわ。・・京都の田舎の方の学校でやったなあ。(黒注※京都市立花背中学校で、衛星版『真夏の夜の夢』を上演。当時、奥田さんが担当で学校さんとの調整をしてはりました)

黒木:ああ!そうやね、

奥田:頑張ってたな、私。

黒木:いろいろありますなあ。

奥田:ねー。


ーーー最後に、宮嶋さんインタビューでも出てきた[衛星のキスシーン]の話が、奥田さんとの話でも出てきたので掲載します!



衛星のキスシーン

ーーー雑談で星衛の話になり・・


奥田:あ!星衛といえば、『フローズン・ビーチ』(黒注※ケラリーノ・サンドロヴィッチ作の。星衛名義で奥田、筒井、山本、黒木で「スタジオVARIE」で上演した。演出:蓮行。)とかしましたね。私二役して。(愛・萌役)

黒木:あー、『フローズン・ビーチ』したなあーー。フローズンビーチ自体の話は全然覚えてないんやけど。奥田さんが殺される役よね。

奥田:筒井加寿子(千津役)と無駄にキスシーンがあったなってくらいしか覚えてへんな・・

黒木:ええ?キスシーンありましたっけ。

奥田:あったあった。「なんでキスシーンあるんやろ」って思いながらしてましたけどね。だいたい衛星のキスシーンって「なんであるんやろ」って思いながらいつもやってたけど。あははは。

黒木:台本の指定じゃなくて?

奥田:ないない。

黒木:あはははは。

奥田:蓮行さんの好み・・、演出。演出ですよね。黒木さんも衛星でキスシーンしたことあったっけ?

黒木:えーとありますよ。(蓮行が)出演している女全員とキスするっていう作品で・・。(黒注※『劇団衛星のコックピット・コンセプト3』です)

奥田:それは蓮行さんがキスシーン好きなんちゃうん。

黒木:あははははは。『プロトタイプ』で上演する『義経千本松原』『捕虜』ではどうなんでしょうね・・。

奥田:私は、黒木さんが出演する『捕虜』が観たいわ。

黒木:あはははははは。


奥田さんとお話するのは8年ぶりくらいで(ユニット美人の東京公演の時に話したきり)、ちょっと緊張していたのですが・・。奥田さんのケラケラ笑う声に「ああ!なんてすずやか!奥田さんだわ!」と爽やかな気持ちになりました。かわいらしく美しいけれど飄々としていて、話していると心安らぐ、本当に素敵な方です。 奥田ワレタさん、ありがとうございました!